出典: 電通グループ公式サイト・2025年12月期決算短信(IFRS)(2026年8月31日閲覧)
電通は1901年創業、125年の歴史を持つ日本最大の広告会社です。2020年1月に持株会社体制へ移行し、上場会社としての顔は「株式会社電通グループ」(東証プライム・4324)、国内事業の中核が「株式会社電通」となりました。グループはAmericas・EMEA・APACを含む世界規模のネットワークを持ち、2025年度のグループ売上総利益は1.1兆円・広告会社グループとして世界6位(米Ad Age誌)の規模です。
近年の注目点は、グループ全体が踊り場にある中で日本事業が明確な成長ドライバーになっていることです。2025年度の日本事業は、インターネット広告に加えBX(事業変革)・DX(デジタル変革)が伸び、売上総利益4,956億円(前期比+6.2%)・調整後営業利益1,211億円(+6.1%)。「国内広告は成熟産業」というイメージとは裏腹に、変革支援領域へ事業を広げた国内電通は成長企業として提案できます。
国内事業は「dentsu Japan」として一体運営されています。中核の電通(単体)に加え、専門領域ごとの事業会社が連携する構造で、求人がどの法人のものかによって、仕事内容・カルチャー・給与テーブルがまったく異なります。
| 主要会社 | 役割・特徴 |
|---|---|
| 電通(単体) | dentsu Japanの中核。大手広告主の統合プロデュース、メディア、クリエイティブ、BX/CX/DXの推進主体 |
| 電通デジタル | 国内最大級のデジタルマーケティング会社。運用型広告・CRM・コマース・データ活用の実行部隊 |
| 電通総研 | ITサービス・システムインテグレーション。金融・製造・公共向けのIT実装とシンクタンク機能 |
| セプテーニ・グループ | デジタル広告運用に強み。グループのデジタル領域を補完 |
| 電通PRコンサルティング | PR・コーポレートコミュニケーション専門 |
| イグニション・ポイント | コンサルティングファーム。戦略・新規事業・DXコンサル領域の成長株 |
| ほか | 電通ライブ(イベント・スペース) / 電通プロモーションプラス / 電通コーポレートワン など約150社 |
候補者の「電通に行きたい」は、そのままでは提案になりません。①単体(総合プロデュース・高処遇・狭き門)か、②電通デジタル(デジタル実務・採用数多め)か、③イグニション・ポイント(コンサル)か、④電通総研(IT)か——志向とスキルをdentsu Japanの地図に落とし、現実的な入口を示すことが支援の第一歩です。
| 企業 | 特徴・強み |
|---|---|
| 電通 | 国内シェア首位級。メディアバイイングの規模×統合プロデュース×BX/DXへの事業拡張 |
| 博報堂DYグループ | 国内2位グループ。クリエイティブ・生活者発想のブランド力 |
| サイバーエージェント | ネット広告首位級。運用型×自社メディア(ABEMA)の内製力 |
| アクセンチュア(Song) | コンサル側からマーケ・体験領域へ進出。BX/CX領域で正面競合 |
電通は自らの立ち位置を「Integrated Growth Partner(IGP)」——広告やマーケティングを超えた領域から顧客企業の成長を支援するパートナー——と定義し、事業を4つの変革領域で整理しています(公式サイト・事業紹介より)。
| 領域 | 正式名称 | 中身 |
|---|---|---|
| AX | Advertising Transformation | 高度化された広告コミュニケーション。デジタルデータで広告効果を最大化し、コンテンツソリューションまで拡張 |
| BX | Business Transformation | 事業全体の変革。新規事業創出、既存事業の変革、企業のインナー改革まで支援。クリエイティブを武器にした「BXクリエーティブセンター」が特徴 |
| CX | Customer Experience Transformation | 顧客体験の変革。データ×クリエイティビティで、認知から purchase・ファン化までの一連のジャーニーを設計 |
| DX | Digital Transformation | マーケティング基盤の変革。新サービス開発とマーケティング基盤開発、データクリーンルーム活用、AI×販促など |
注目すべきは、この4領域が単なるサービスメニューではなく相互に連携する「変革と成長のサイクル」として設計されている点です。広告(AX)で獲得した顧客理解をCX・DXの基盤に接続し、その先の事業変革(BX)まで踏み込む——広告会社の顧客接点と、コンサルファームの変革支援を一気通貫でつなげられることが、電通の独自ポジションです。
公式の事業紹介には、BXデザイン局、BXクリエーティブセンター、カスタマーエクスペリエンス・クリエーティブ・センター、データ・テクノロジーセンター、トランスフォーメーション・プロデュース局など、変革領域の専門組織が実名で多数登場します。Cookieフリー時代のデータクリーンルーム活用、AI×販促のDX実践、広告運用の自動化時代の運用者の付加価値——といった論点を第一線の社員が発信しており、「マス広告の会社」というイメージ更新の材料として最適です。
電通(単体)の報酬水準は広告業界最高峰です。年功と職務のハイブリッド型で、30歳前後で1,000万円が視野に入り、管理職・クリエイティブディレクター級で1,500万円を超えていきます(調査ベース)。一方、グループ会社は法人ごとに給与テーブルが異なり、同じ「電通グループの求人」でも水準は大きく変わります。
| 区分 | 年収目安(調査ベース) | 備考 |
|---|---|---|
| 電通(単体) 20代後半 | 700〜1,000万円 | 30歳前後で1,000万円が視野 |
| 電通(単体) 30代中堅 | 1,000〜1,400万円 | 職務等級により幅 |
| 電通(単体) 管理職・CD級 | 1,500万円〜 | クリエイティブは個別評価も |
| 電通デジタル | 500〜1,000万円台 | 単体とは別テーブル。デジタル実務者の相場感 |
| イグニション・ポイント | 600〜1,500万円 | コンサル職位連動 |
※すべて転職エージェント各社の調査・口コミベースの推計であり、公式発表値ではありません。
有価証券報告書ベースで報じられる電通グループの平均年間給与(約1,596万円・2025年12月期)は、持株会社(電通グループ単体)の少数精鋭の数値であり、事業会社である電通やグループ各社の給与相場そのものではありません。リクルートHDと同じ構造の「平均年収の罠」です。候補者の想定年収がこの数字で膨らまないよう、応募先法人のテーブルで丁寧に説明しましょう。
キャリア採用は職種別に通年で行われており、従来のビジネスプロデューサー(営業)に加えて、データサイエンティスト、DXコンサルタント、UX/サービスデザイナー、コマース、クリエイティブなど変革領域の採用が拡大しています。事業会社のマーケター、コンサルファーム、IT企業出身者の転職事例が増えているのが近年の特徴です。
選考では、担当ブランド・キャンペーンの実績を「課題→戦略→実行→成果」で構造化して語れるかが問われます。デジタル・データ職はポートフォリオや運用実績の定量提示が有効です。単体の採用は依然狭き門のため、電通デジタルやイグニション・ポイントを含めたグループ横断での入口設計が現実的な支援になります(グループ内の異動・出向で単体の仕事に関わるルートも存在します)。
社内では営業⇄プランニング⇄専門センター⇄グループ会社出向と異動の幅が広く、国民的キャンペーンや大型イベントなど、他では絶対に経験できない規模の仕事に関われるのが最大のキャリア資産です。BX/CX領域の拡大により、「広告のプロ」だけでなく「事業変革のプロ」としてのキャリアも社内で描けるようになりました。
労働環境改革により深夜残業の制限など是正が進んでいますが、大型案件・時期による繁忙の波は残ります。「今の電通」の働き方を、過去の報道イメージと切り分けて説明することが、候補者の不安解消と入社後のギャップ防止の両方に効きます。あわせて、デジタルシフトに伴い従来型の広告営業経験だけでは評価されにくくなっている点も、率直に伝えるべき変化です。