※本記事は、創業初年度に単月黒字化を達成した人材紹介会社の創業者への取材をもとに、The Agent編集部が一問一答形式で再構成したものです(会社規模等の詳細は編集部で一部抽象化しています)。
—— 立ち上げ時、最初に決めたことは何ですか?
「やらないこと」です。人材紹介は参入障壁が低いぶん、プレイヤーが無数にいます。全方位でやる紹介会社に、候補者がうちを選ぶ理由はない。だから最初に領域を一つに絞りました。基準は3つで、①一人あたり粗利が高い業界に接続していること、②自分たちが候補者より詳しくなれる領域であること、③紹介先企業のセグメントが明確なこと。絞ると集客は狭くなりますが、面談からの決定率がまったく変わります。「その領域のことなら、この会社が一番詳しい」という状態は、広告費より強い集客装置になりました。
—— 絞ることへの不安はなかったですか?
ありましたが、逆算すると答えは明確でした。初年度の目標成約数から必要な面談数・集客数をファネルで逆算すると、実は狭い領域でも母数は足りる。足りないのは母数ではなく決定率だと分かっていたので、決定率が上がる選択——専門特化——を取りました。
—— 初期メンバーはどう集めましたか?
意外に思われるんですが、業界経験者をあえて中心にしませんでした。経験者は即戦力ですが、前職の型を持ち込みます。型が3人分バラバラのチームは、うまくいっても再現性がない。それより「素直に型を回せて、学習量でキャッチアップできる人」を採って、共通の型を全員で磨く方を選びました。実際、立ち上げ初期の成果は個人のセンスではなく、初回面談・応募合意・対策・クロージングの型をどれだけ標準化できるかで決まったと思います。
—— 未経験メンバーの育成はどう設計しましたか?
3つだけ徹底しました。①全商談の録音を資産にする(良い商談も悪い商談も教材になる)、②ロープレを業務として毎日入れる(空き時間にやるものにしない)、③振り返りには必ず仮説を持ってこさせる(「どうでしたか?」ではなく「自分はここが原因だと思う、どうか?」)。この3つで、未経験でも3ヶ月で商談の型は身につきます。
—— KPI設計で工夫した点は?
ファネルの数字(集客→面談→応募→内定)は毎週全員で見ます。ただ、評価の中心には置きませんでした。数字を評価の中心にすると、短期の数字にならない行動——ナレッジ共有、企業情報の記録、後輩のロープレ相手——が真っ先に削られます。この「投資行動」こそ2年目以降の資産なので、評価は数字と投資行動の両輪にしました。結果的に、見送り理由の記録や企業ナレッジが初年度から貯まり、それが2年目の通過率を押し上げています。
—— 逆に、初年度の失敗は?
集客チャネルを増やしすぎたことです。スカウト媒体を一気に3つ契約して、どれも中途半端になりました。チャネルごとに文面の型も検証の回し方も違うので、少人数のうちは1媒体を使い倒して開封率・返信率の型を作ってから横展開すべきでした。あれは完全に授業料でしたね。
—— 最後に、これから紹介会社を立ち上げる方へアドバイスをお願いします。
3つあります。①領域を絞る勇気を持つこと。広げるのはいつでもできますが、絞り直すのは難しい。②型を作ってから人を増やすこと。型のない組織の増員は、バラつきの量産です。③そして、候補者への誠実さを短期の数字より上に置くこと。立ち上げ期は1件の成約が重いので、押し込みたくなる瞬間が必ず来ます。でも軸なき押し込みは、返金と評判毀損で必ず高くつく。初年度に守った誠実さが、2年目以降の紹介と再登録という一番安い集客チャネルになります。これは綺麗事ではなく、事業の数字の話です。
本記事で語られた「型の標準化」は、ナレッジ「エージェントという仕事」の6ステップファネルと歩留まりマップに対応しています。立ち上げ期のKPI設計の参考にしてください。